大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和34年(ワ)7764号 判決 1960年11月04日

判決

東京都杉並区井荻三丁目一四番地

原告

田 辺 三 郎

右訴訟代理人弁護士

石 井 一 郎

同都千代田区有楽町一丁目三番地

被告

中田合資会社

右代表者無限社員

田 辺 正 夫

右訴訟代理人弁護士

西 村 史 郎

右当事者間の昭和三四年 第七七六四号社員でないことの確認請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

一、原告は、被告会社の社員でないことを確認する。

二、被告は、東京法務局日本橋出張所昭和三一年一〇月一九日受付第三一、九六四号被告会社設立登記中、社員の氏名等欄のうち「杉並区井荻参丁目拾四番地金五十万円全部履行有限田辺三郎」なる部分の抹消登記手続を為せ。

三、訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求め、その請求原因として、「被告会社は、金銭貸付業、不動産の売買周旋及び日用品雑貨の販売を目的として、昭和三一年一〇月一九日設立登記された合資会社である。而して、原告は、登記簿上、右会社の五十万円を出資した有限責任社員であることになつている。しかしながら、原告は、被告会社の設立に際しては勿論その後においても、被告会社とは何らの関係なく、したがつて、右会社の社員となつたことはない。よつて、原告は、被告会社の社員でないことの確認を求めると、ともに、右登記の抹消を求めるため、本訴請求に及んだ」と陳述し、立証(省略)

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、原告主張事実中、被告会社が原告主張とおりの合資会社であること、原告が五十万円を出資した有限責任社員として登記されていることは認めるが、その余の点は否認すると述べ、原告は、自己の意思にもとずき、出資の約をなし、入社したものであると主張した。

理由

原告が、被告会社の五十万円を出資した有限責任社員として、登記されていることは当事者間に争ない。而してその余の原告主張事実は、原、被告(代表者)本人尋問の各結果により、全部、これを肯認することができる。他に、以上認容を覆しこれを左右するに足る証拠はない。そうだとすれば、原告は、非社員であるのに拘らず、その氏名を冒用され、商業登記簿上、被告会社の有限責任社員として、登記されていることが、明らかであるから、被告会社の社員でないことの確認を求める請求が認容せられると同時に、該登記抹消請求も、人格ないし氏名権の侵害として、当然、なし得るものと解すべきで、原告の請求は、いずれも、理由があるから、正当としてこれを認容することにし、訴訟費用の負担については、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第八部

裁判長 裁判官 長谷部 茂 吉

裁判官 上 野   宏

裁判官 玉 置 久 弥

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例